海上での工事やイベントなどで船舶が輻輳する場所においては「警戒船」という船を配置しなければなりません。港内で浚渫作業をしている場所の近くや、湾岸の花火大会などで皆さんも目にしたことがあるでしょう。陸の工事現場にもガードマンがいるように、海の工事現場にもガードマン的な船が必要ということです。そしてそうした警戒船に乗船するには、この「警戒船講習会」を受講し、修了証を発行してもらわないとその業務に就くことはできません。これまで警戒船講習会は3000円程度の受講料を支払って海上保安庁が認可した団体が行っていたのですが、平成25年4月1日より海上保安庁が直接実施することにより、その費用も無料になりました。そのためか、受講者が殺到し、全国的にも定員をはるかに超える応募があり、抽籤にて受講者を決める事態になっているようです。第三管理海上保安本部では4-5倍の倍率となっているようであります。
私は、無料になってからの最初の回は抽籤に外れたのですが、今回運よく第2回目にして受講することができるようになりました。ここで平成25年12月19日に行われた平成25年度第2回警戒船講習会の様子をご紹介したいと思います。
1. なぜ海事代理士が警戒船講習会なのか
海事代理士は単に海事代理士業の対象としての海事法規や手続きだけを知っていればそれていいということではありません。船に関するありとあらゆる知識を取り入れ、そうした理解を背景に持って専門家として必要なアドバイスができるのです。だから、船に関するものはなんでも貪欲に知識を得たいと思っていました。そうしたことを考えていた時に、たまたま警戒船に乗っている海事代理士の先輩から「警戒船の乗り手がいなくて困っているんだ」という話を聞き、「では是非やってみたい」と思い、警戒船講習会を受講することになったのでした。
なお、警戒船講習会は警戒船業務に就く予定のある(あるいは現に就いている)方を対象にした講習会です。資格マニアや乗船予定のない方は基本的には受講できないことになっています(ただし人数にゆとりがあれば可能)。原則として、実際に業務に就く予定のある方のみ受講するようにしてください。
2. なかなか発表されない講習会日程
平成25年度より警戒船講習会は海上保安庁が直接無料で実施することは早くよりホームページなどを通して知っていたのですが、ではいつ実施されるのかという日程はなかなか発表されませんでした。日程がわからないと予定を立てられないですし、乗船勤務の計画も立てられないので困っていました。通常役所の業務というものは新年度の計画や予定は前年度末にほぼ確定しており、関係各所に前年度三月末日までに知らせるというのが通常であります。というのも、年度ごとの予算によって役所は動いておりますので、新年度になってその予定が未定だと4月からの仕事ができないという事情もありますし、他の関係機関と日程が重なったりしないようその日程を早々と告知しなければならないという事情があるからなのです。しかし今回の警戒船講習会については6月末になっても当該年度の予定が発表されませんでした。制度変更により海上保安庁もさまざまな準備が必要だったのでしょうか、そうした準備が完了するまでははっきりとした日程が出せないという事情を抱えていたのでしょうか。詳しい内部事情は分からないので想像の域を超えませんが、平成25年の初年度に限ってのことでしょうが日程公表は7月下旬にならないとされませんでした。
3. 平成25年第1回警戒船講習会はみごとはずれる(平成25年9月26日)
ようやく警戒船講習会の募集が第三管区海上保安本部のホームページに掲載され、決められた期間にしっかりと申込みさせていただきました。警戒船講習会の申し込みは指定された期間内にしなければならないので、うっかりしていると過ぎてしまいます。完璧に書類を書き上げ、封筒の表に投函する日を書いた付箋を貼り、玄関に置いて投函日を待ちました。そして無事投函。とりあえずホッとする。
そして、ある日、仕事をしていると突然事務所の携帯が鳴りました。
春 | 「はい春山事務所です」 |
---|---|
海 | 「こちら第三管区海上保安本部の警戒船講習担当です。春山さん、今回は残念ながら抽籤に外れてしまいました。なので今回は参加できません。また次回12月に第2回の講習をやりますので、その時にまた申し込んでください。」 |
春 | 「ちなみに何人くらい申し込みがあったのですか?」 |
海 | 「479名申し込みがありました」(→募集は100名) |
春 | 「ああそうですか、じゃあ仕方ないですね。また今度にします。」 |
海 | 「今回もれたからといって、優先枠があるわけではないことは了解してください」 |
春 | 「はい分かりました」 |
100名募集のところに479名ということは、倍率がなんと4.79倍になります。これじゃあ、抽籤に外れても仕方ありません。計算上、2-3年申し込み続ければ抽籤に当たるということです。しかし、何でこんなに希望者が多いのだろう…
4. 第2回講習会の申し込み、そして当選
第2回目の講習会の日程は、比較的早くから出ていました。したがって何か月も前からスケジュール帳にチェックをし、またもや玄関に封筒を準備し、ポストに投函する日を待ちました。前回はどうやら返信用の封筒を入れ忘れたみたいなので、電話で参加の可否の回答をいただいていたのですが、今回はきちんと返信用の封筒も入れ(そういえばこういうのを「SASE」とハム業界では言っていたような)期日にきちんと投函しました。
そうしたら今回は「当選!」したのです。前回の倍率を聞いていたから、今回もだめだろうなぁとあきらめていたのですが、結果は意外にも早く講習を受けられるようになりました。
警戒船講習会のお知らせ
5. 講習会会場の様子
講習会は140名ほどの席で3人掛けの椅子に3人で座るほど目いっぱいでした。それぞれ番号札が机に貼ってあり、座るところが決められていました。そして机の上にあらかじめ資料が置かれていました。そういう状態なので、欠席をすると一目瞭然なのですが、さすがに欠席の人はほとんどいませんでした。全体で5-6人?
講習そのものはパワーポイントによる説明なのですが、部屋が暗くなるし、お昼ご飯食べたばかりの時間帯だし、ちょっと覚醒を保つのが辛いときもあります。また、内容的に「テキストを読めばわかる」程度のごく簡単な内容なので、私にとってはもう少しディープな話のほうが好みだったかなと思います。
<警戒船講習会スケジュール> 13:00受付 受付前から運輸局ロビーは受講者であふれていた 13:30-14:00 挨拶 14:00-15:00 警戒船業務講習 15:00-16:00 警戒船管理講習 16:00-16:30 修了証授与 |
6. テストと修了証
ひととおり講義が終わるとテストが行われます。ただしテストと言っても理解度を確認するアンケートみたいなもので、それに合格不合格はありません。だから白紙でも提出できるにはできるのですが、そこは満点とれるように一所懸命記述しましょう。
そして、解答用紙を回収し終わると直後に「受講証明書」の授与になるのですが、海上保安庁の方は慣れていないのか、多くの人をスムーズに流す手順がちょっと…でしたので、受講生はどこに並んだいいやらといったハプニングもありました。そして以下の受講証明書を受け取って解散となります。
受け取ったら記載事項をきちんと確認するようにしましょう。あとで訂正することもできるのですが、いろいろと面倒なのですぐに確認し、間違いがあればその場で申し出たほうがいいでしょう。
管理講習 | 業務講習 | アンケート |
7. 警戒船講習会の応募について
警戒船講習会は人気が高く、また無料になったためかたくさんの人が応募するようになったため、倍率が非常に高くなっています。こうした講習を小規模事業者でもできるようにすれば、当事務所でも開催させていただきたいのですが、いかんせん現在は海上保安庁が直接実施することになっています。せめて、非常に限られた期間にしか申し込みができない講習で、申し込みそのものも忘れてしまいそうな恐れがあります。
警戒船講習はその受講の条件としては特に何もありません。したがって船の免許を持っていない方でも一応受講することができます。ただし、仮に受講して証明書を発行してもらったからといって、警戒船業務に従事できるとは限りません。雇用主や依頼主からすると最低限「二級以上の小型船舶免許」と「三級以上の海上特殊無線技士免許」は雇用の条件として必要になります。
当事務所では希望する方には、申し込みの代行を行います。ご希望の方はぜひお問い合わせください。