第三級アマチュア無線技士

 アマチュア無線技士は本来は船舶無線のために作られた資格ではなく、アマチュア業務のための資格です。しかし、アマチュア無線局として開局する際に、移動局として届出をし、その移動範囲に「海上」を加えることによって、船舶上でも運用することができるようになります。当事務所の春山勝もアマチュア無線局を開局し、「JH1OOZ」のコールサインで船上で移動運用しています(144MHz,430MHz)。
 アマチュア無線局は通信範囲が国内通信に限定されおらず、国際通信も可能なため、プロの上級無線資格を持っていない方が国際航海をする場合には便利なものとなります。ただし、そもそもアマチュア無線局のため、その通話の相手は基本的には船舶航行には関係のない趣味で無線をしている一般の個人や法人の方たちです。よって、例えば遭難通信などの際には、通信の相手方に遭難した旨と状況を伝え、陸上の電話回線などによって「118」に電話をかけてもらう必要があります。よって間接的であり、緊急避難的な通信手段であると認識しておかなければなりません。また、近年アマチュア無線の人口が減少していると聞きます。従って、呼び出しチャンネルで「CQ」と呼び出したとしても、それを聞いている人がいなく、応答がない場合もあるようです。
 一方で便利なこともあります。それは海上や船上のみで使用する無線としなくてもいいということであります。すなわち、無線機の設置場所を定め(固定局)、移動局として移動範囲を「陸上、海上及び上空」とすれば、事実上世界中どこでも運用することができるのです。しかも車に乗りながら、飛行機などの上空で、そして海の上で運用することができます。また、アマチュア無線の機器は中古で安く出回っているため(場合によっては数千円)安価に運用開始することができます。こうした状況から小型船舶で沿岸区域や河川・湖水など平水区域くらいしか航行しない船舶には便利だと思います。
 そうしたアマチュア無線局にはアマチュア無線技士という資格が必要になります。その中でもこの「第三級アマチュア無線技士」は実用範囲内でのアマチュア業務を行いたい方で、特にVHF,UHF帯の運用を中心にしたい方に向いています。第二級アマチュア無線以上の方がよく運用するHF帯は機器が大きく、設備が大型になるために、「固定局」といって自宅や施設に大きなアンテナを設置して使用することが多くあります。実は船舶の上(特に小型船舶)ではこうした大きな無線設備はとても邪魔なので、コンパクトさが求められるために、VHF,UHF(あるいはSHF以上)の機器で運用することが多いのです。従って、船舶などの移動局として運用するのであれば、この資格で実用範囲上限となることでしょう。かつては「電信級アマチュア無線技士」という名称で、現在は「第四級アマチュア無線技士」となっている旧「電話級アマチュア無線技士」との違いはモールス信号が使えるか否かでした。現在もこの資格でモールス信号が使えるので、広い海原で遭難した際など、モールス信号を使って救助を求めることも可能になります。モールス信号は無線電話(すなわち人間の声)に比べてはるかに遠い距離まで届きますので便利です。

【第三級アマチュア無線技士の資格でできること】

  • アマチュア局の無線設備(空中線電力50W以下であって、周波数が18MHz以上のもの又は8MHz以下のもの)の操作

【試験について】

  • 受験資格 : 特になし
  • 試験の日程など : 財団法人日本無線協会のホームページでご確認ください
  • 国家試験以外の資格の取得方法 : 養成課程を受講したり、認定講習課程を受講したり、学校を卒業することによって試験の一部や全部が免除されるケースがあります。ただしそれなりにお金と時間が必要になります。

 

2018年07月03日